HOME > ニュース一覧 > 今月の一品② クレオパトラの銀貨
2015.05.08
クレオパトラは、皆様ご承知のように、古代エジプト最後の王朝プトレマイオス朝の女王で、古代エジプトはこの人の死をもって幕を閉じます。古代エジプト史には何人かのクレオパトラが登場しますが、このクレオパトラさんは、厳密にはクレオパトラ7世です。有名な美女であったと言われ、同時に政治家としてもひとかどの存在だったようです。ジュリアス・シーザーやマルクス・アントニウスを手玉に取った恋愛話もシェークスピアの戯曲などで有名です。
そのクレオパトラの肖像(横顔)を刻んだ銀貨が中近東文化センターの展示室の一番奥まった一角にあります。拡大鏡を備えてありますから、本当にそんな美人だったかどうか、皆さん自身の目で確かめてみて下さい。実は、この銀貨などに描かれている肖像を基に、「クレオパトラはそんな美人ではなかった」という説も結構主張されているのです。
因みに、この銀貨の裏側には、アントニウスの肖像が刻まれています。両者がとても親しい関係にあったことは、このことからもうかがうことができ、シェークスピアもさぞ満足なことでしょう。隣に置いてあるシーザーの金貨が何を感じているかは知りませんが。
この銀貨は、古物商から入手した記録がありますが、それ以上の細かい由来は必ずしも判然としていません。ただ、同じような種類の貨幣の記録から類推すると、紀元前38~36年にエジプトで鋳造されたもののようです。
この時代の貨幣は、貨幣の基本的機能(価値尺度、流通・交換手段、価値貯蔵手段)を備えていますが、流通量が絶対的に少なく、一般の人々が日常的に使うものではなかったようです。私たちが八百屋さんで買い物をするときに払う百円玉とは感覚的に随分違います。勿論、一定の価値を体現するものですから信用が大切で、その信用を確実なものとするために、支配者の肖像を刻んだとも考えられます。逆に言えば、支配者がその支配地域に権威を示すために鋳造することもあったでしょうし、大きな国家イヴェントの機会に、その力を誇示するための記念硬貨として発行したものもあったことでしょう。となると、この銀貨は、クレオパトラとアントニーの結婚記念硬貨? (羊頭)
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