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2017.04.03

今月の一品(24) ラスター彩人形タイル

 再びラスター彩です。昨年夏に本欄に登場した「母子像、楽人座像」と向かい合わせのケースの中に、平べったい造りの人形があおむけに寝ています。

 タイルということで、一般的な四角のタイルの間を埋めるように使われた装飾用のものだったと解されています。偶像禁止のイスラム教が支配的だった13世紀のペルシアの物ですから、個人的な場の壁を飾っていたと想像されます。お守りとか厄除けのために部屋の壁に取り付けたと言うと我々には一番解りやすいのですが、それこそイスラム教で最も忌避する偶像崇拝に当たりますから、多分単なる装飾だったのでしょう。ただ、目付きが何となく横目になっていて、こんな目付きで部屋のあちこちから睨まれたら、あまり居心地が良くなかったのではないかと心配になります。タイルと言っても、壁などに貼り付けないで、個人的な愛蔵物とするということもあったようですが、そうなると何のために作られたのかという迷路に入り込んでしまいます。お金持が誰か親しい人の面影を偲んで作らせた物だとか、陶器職人が自分の技量を試してみるために作ったとか、色々お話ができますが、どれも想像の域を出ません。はっきりしているのは、この像の製作者が優れた技量の持ち主だったということだけです。

 像の前面の中央を縦に貫いている青い線もよく解りません。ラスター彩の焼き物でこのような色を組み込んだ作り方は、あまり例が多くないように思います。ラスター彩部分と青い線の部分とを比べると、光の反射具合が違いますし、見る角度によってはこの青い線の部分だけが別に盛り上がって見えます。陶器の製作技術としては、驚くようなものではないのかもしれませんが、ラスター彩という最高の技術の中に態々このような手法を混ぜたことには興味を惹かれます。特に、これが当時のファッションのどのようなものを示しているのか、あまり判然としないだけに余計不思議な感じがします。多分重ね着をした上着の下から覗いている下の衣類を示しているのでしょうが、場合によっては、長い上着の真ん中の縁取りのようにも思われます。しかも、この線は足元まで下がっていて長い上着よりも更に下にまで届いているようにも見えますから、素人は益々混乱してしまいます。

 最後にこの顔立ちです。身長との割合で見ると、かなり顔が大きく作られています。その顔立ちもふっくらしていて、何となく微笑ましい感じがします。源氏物語絵巻などに描かれている引き目鉤鼻の下膨れの顔立ちという美人に似ているようにも思えて、一種の親近感を覚えるのかもしれません。   平成29年4月3日 羊頭

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